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台湾の発票制度とは?日本企業が知っておくべき基本と実務

  • 執筆者の写真: Work Capital Inc.
    Work Capital Inc.
  • 6 日前
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更新日:5 日前

台湾 発票

台湾への進出を検討する際、日本企業が戸惑う制度のひとつが「発票(ファーピャオ)」です。これは単なるレシートではなく、台湾特有の公的インボイス制度であり、会計処理や税務申告、さらには企業運営において重要な役割を果たします。

本記事では、発票制度の仕組み、電子化の現状、実務への影響、税務との関係、そして日系企業が直面しがちな課題と対策について解説します。



1. 発票制度の成り立ちと目的


台湾の発票制度は1951年に導入されました。当時、レシートを発行しない取引が横行し、政府は税収確保の手段として、くじ付きの「統一発票」制度を導入しました。消費者がレシートを受け取ることで宝くじに参加できる仕組みとしたことで、売上の申告漏れを抑止し、導入翌年には税収が大幅に増加したとされています。


この制度の本質は、すべての商取引を政府が一元的に把握するための「番号付き公式インボイス」の発行です。企業が取引ごとに発票を発行し、税務当局はその番号を基に売上と税額を管理します。これは日本のインボイス制度とは異なり、発票の発行が義務であり、発票なしでは経費計上すらできません。


発票の主な種類には以下があります。

・三聯式統一発票(企業間取引用の3枚複写形式)

・二聯式統一発票(消費者向けの2枚複写形式)

・POSレジ対応の感熱紙発票(小売用)

・コンピュータ出力型発票(EC・B2B)

・特種業種用の発票(銀行・保険など)



2. 電子発票(eGUI)の概要と制度移行


従来は紙の発票を税務署で購入し、手書きやレジ印字で管理していましたが、2010年代以降、台湾政府は電子化を進め、現在では原則としてすべての発票を電子化(eGUI)することが義務付けられています。これにより、企業は発票データを政府の電子インボイスプラットフォームに送信し、管理する必要があります。


電子発票を発行するには、以下の準備が必要です。

・税務署への事業者登録と電子証明書の取得

・発票番号の申請(2カ月単位)

・電子発票発行システムの導入(政府提供または民間システム)

・発票データの定期送信とバックアップ(最低5年間保管)


発票にはQRコードが付与され、消費者はスマートフォンで読み取り、アプリで宝くじの当選確認やポイント還元が可能です。また、紙の発票を出さず、顧客の「載具」(アプリ会員番号やカード番号)にデータを紐づける運用も普及しており、政府はこれを「雲端発票(クラウド発票)」として推進しています。

今後は、電子発票の即時申告や、B2B取引におけるリアルタイム報告の義務化が進む見込みで、これに対応するための体制整備が企業に求められています。



3. 発票の実務運用:発行・管理・経理処理


台湾では売上が発生するたびに発票を発行する必要があります。特に法人間取引(B2B)では、発票に相手企業の「統一編號」(日本で言う法人番号)を記載し、電子データとして送信します。


企業側は以下の点に注意する必要があります。

・POSや販売管理システムと連携した発票発行

・売上日基準での発票発行(入金日基準ではない)

・番号未使用・誤発行時の訂正処理(キャンセルや訂正票の発行)

一方で、仕入や経費についても相手から正しい発票を受け取らなければなりません。たとえ100元程度の経費でも、発票がなければ損金として認められず、仕入控除もできません。


従業員が経費精算する際にも、発票に企業番号が印字されていることが必須であり、そのためには名刺や社員証に企業番号を印刷して携帯させることもあります。

企業によっては、発票管理をクラウドサービスで一元化し、発行・受領・分類・保存・申告用データ作成まで自動化しています。ERPやクラウド会計ソフトとの連携が非常に重要で、初期導入時のシステム構築は発票制度対応の要となります。



4. 発票と税務申告の関係


台湾では、発票の発行情報がそのままVAT申告(営業税)に直結します。営業税は5%で、売上VATから仕入VATを差し引いた額を納税します。

2カ月ごとに税務申告があり、電子発票を導入している企業は、売上・仕入の発票データを基に自動計算・申告が可能です。


発票なしの支出、記載不備、報告遅延は、以下のリスクを引き起こします:

・経費不認定により法人税負担増

・VAT控除不能による納税額増加

・罰金(最高で未発票売上額の10倍)や営業停止


例えば、発票を発行せず売上除外をした場合は、悪質な脱税と見なされ、厳しいペナルティが科されます。さらに、電子発票を期限内に政府システムへ報告しなかった場合も科料の対象となります。



5. 日本企業が直面する課題と現地対応策


発票制度に不慣れな日系企業が陥りやすい課題には、次のようなものがあります。

・独自フォーマットの請求書が無効扱いされる

・発票をもらい忘れ、経費が認められない

・システム未対応で発票発行ができない

・発票番号の管理ミス


進出初期には、会計業務をアウトソースすることで、現地制度に慣れるまでのリスクを大幅に減らすことができます。

当社提携の現地会計事務所の紹介も可能ですので、お気軽にご相談ください。



まとめ


台湾の発票制度は、単なる経理ルールを超え、税務管理と事業運営に直結する制度です。紙から電子への移行により、業務のデジタル化とスピード対応が求められる中、日本企業も制度を正しく理解し、早期に適切な体制を構築することが重要です。

現地会計事務所との連携やクラウドツールの活用により、発票制度への対応は十分に可能です。

正確な理解と実務への組み込みによって、税務コンプライアンスを維持しながら、台湾市場でのビジネスを安定して展開していくことができるでしょう。



ワークキャピタル株式会社の台湾進出実行支援コンサルティング


当社は、東京・台北の2拠点で展開し、日本企業の台湾市場への進出をハンズオンで実行支援しています。

これまで手掛けた日本〜台湾間のプロジェクトは300を超え、法人設立から、現地での営業・マーケティング展開まで総合的に事業支援できることが最大の特長です。

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