海外進出:台湾はアジアへのゲートウェイ
- Work Capital Inc.
- 6月1日
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更新日:6月1日

日本から近く文化的な親和性も高い台湾は、その市場環境や高い購買力から、日本企業にとってアジア進出の最初の一歩として理想的な候補地の一つとなっています。
台湾市場の所得水準・消費傾向と親日性、台湾およびアジア全体の市場規模、台湾企業や華僑ネットワークによる他国展開の強み、さらにシンガポールや香港など他の拠点とのコスト・アクセス面の比較について、データを交えて解説します。
高い所得水準と親日的な消費文化の台湾市場
台湾は一人当たりGDPが約3.4万米ドル(2024年、IMF推計)と所得水準が日本に匹敵するほど高く、購買力も極めて大きい市場です。
物価水準を加味した一人当たり実質GDP(PPP)では7万3千ドル以上に達し、世界第14位と日本を上回る水準となっています。
このように所得水準が高いため、台湾消費者は品質志向が強く、中高級品にも手が届く豊かな購買力を備えています。 さらに台湾の消費者は日本製品やブランドへの信頼感が非常に高いことが特徴です。調査によれば、台湾人消費者の94%が日本製品を信頼しているとされ、デザイン面でも「日本の製品デザインに良い印象を持つ」と答えた人が91%にのぼりました。
これは「日本と台湾は地理的・文化的に近いため、日本発の商品を受け入れやすい」ことが背景にあると指摘されています。実際、日本に「親しみを感じる」台湾人も8割を超えており、日系企業の商品・サービスが受け入れられやすい土壌があります。
このような親日的で品質志向の消費文化に支えられ、台湾市場は日本企業にとって魅力的な市場となります。
言語面でも、日本語を学ぶ台湾人や日本文化に詳しい消費者が多く、現地に根ざしたマーケティング展開もしやすくなります。
順位 | 国名 | 名目GDP(USD) | 人口(推定) |
---|---|---|---|
1 | 米国 | 30.51兆 | 約3億4,000万人 |
2 | 中国 | 19.23兆 | 約14億2,000万人 |
3 | ドイツ | 4.74兆 | 約8,400万人 |
4 | 日本 | 4.19兆 | 約1億2,400万人 |
5 | インド | 4.18兆 | 約14億3,000万人 |
・・・ | ・・・ | ・・・ | ・・・ |
20 | スイス | 1.00兆 | 約900万人 |
21 | ポーランド | 9,150億 | 約3,800万人 |
22 | 台湾 | 8,140億 | 約2,300万人 |
23 | スウェーデン | 6,390億 | 約1,200万人 |
台湾単体の市場規模とアジア全体へのポテンシャル
人口約2,340万人(2025年時点)の台湾は、市場規模こそ中国や東南アジアの大国に比べれば小さいものの、120兆円を超える規模を持ちます。(日本の経済規模:約600兆円)
これは一国として無視できない規模であり、購買力平価ベースでは日本以上の豊かな消費市場です。また都市部を中心に消費者の嗜好が日本と近似しており、日本企業の商品がヒットしやすい土壌があります。
とはいえ、台湾進出の真価はその先に広がるアジア市場全体へのゲートウェイとなり得る点にあります。アジア太平洋地域は近年著しい経済成長を遂げており、世界経済に占める比重も過半数に達しました。
特に中間層の爆発的な台頭が続いており、世界の中間層人口に占めるアジアの比率は2020年時点で54%、2030年には約66%に達する見通しです。
これは2030年までにアジア太平洋で35億人規模の中間層消費者が生まれることを意味し、世界最大の消費市場がアジアに形成される計算です。
したがって、まず親日的でテストマーケットに適した台湾で事業基盤を築けば、将来的に巨大なアジア市場全体へと展開できるチャンスが広がります。
台湾で得られた消費者ニーズの知見やブランド認知、そして社内の人材や人的ネットワークは、中国本土や東南アジア諸国など周辺の市場攻略にも活かせます。台湾単体の市場での売上を見込めるだけでなく、その成功モデルを横展開することでアジア全域での事業成長が期待できるはずです。
台湾企業・華僑ネットワークが支えるアジア展開力
台湾は自国市場が比較的小さいこともあり、台湾企業自体が積極的に海外、とりわけアジア各国へ進出してきた実績があります。
中国大陸や東南アジアには「台商」と呼ばれる台湾系企業・経営者が多数進出しており、各地にビジネスネットワークを築いています。
実際、台湾政府も「南向政策」「新南向政策」などを通じて東南アジアへの投資・展開を後押ししてきた経緯があり、ベトナムやタイ、インドネシアをはじめ域内で台湾企業が進出・投資を加速させてきました。
このような背景から、日本企業にとっては台湾のビジネス人脈や華僑系ネットワークを活用することで他国展開をスムーズに進められるメリットがあります。
例えば、中国市場への進出に際しては、台湾企業と提携して現地に乗り込むケースが近年活発化しています。中国内で人脈やノウハウを持つ台湾企業が少なからず存在するため、日本企業単独では越えにくい壁も台湾パートナーの協力で克服できるからです。
同様に、東南アジア各国でも華僑系コミュニティや台湾商工会のネットワークが張り巡らされており、台湾を拠点にすることでそれらネットワーク経由の市場参入が期待できます。実際、世界台湾商会連合総会という台湾系ビジネス団体は世界71か国・地域に支部を持ち、約4万社の企業会員を擁するとも報告されており、このグローバルな華人ビジネスネットワークは心強い後ろ盾となります。
要するに、台湾で現地企業や華僑ネットワークと良好な関係を築けば、中国本土から東南アジアまで含めた広域展開の足掛かりを得られやすくなります。
台湾人ビジネスパーソンは親日的で協力的な人が多く、日本企業との協業にも前向きです。共同で商品開発や現地マーケティングを行ったり、台湾企業の海外拠点網に日本製品を乗せてもらう形で販路を一気に拡大したりといった戦略も十分可能です。
他のアジア拠点と比べたコスト優位性とアクセスの良さ
アジア展開の拠点候補としてはシンガポールや香港も挙がりますが、台湾にはコスト面とアクセス面で大きな優位性があります。まずコスト面では、台湾の物価や人件費は日本やこれらアジア主要都市に比べて安く済みます。
法人税率も2025年現在20%程度と、日本の実効税率の30%前後よりも低く抑えられており、税制面でも有利です(※シンガポール17%、香港16.5%と比べても遜色ない水準)。
一方、香港・シンガポールは国際金融センターとして魅力があるものの、オフィス賃料や生活コストが世界でもトップクラスに高額です。台北の生活コストはシンガポールや香港と比べても半分以下にすることが可能です。
現地駐在員を派遣する場合の住宅費や給与水準、オフィス開設費用などを考えると、台湾拠点はこれら都市に比べて圧倒的にコストパフォーマンスが高いと言えます。
中堅・中小規模の日本企業にとって、初期投資や固定費を抑えつつアジア展開する上で台湾は財務的なリスクを軽減できる選択肢となります。
アクセス面でも台湾は優れています。日本との地理的距離が近く、東京から台北まで飛行機で3時間半程度と出張ベースの往来もしやすい距離です。
時差もわずか1時間で、日本本社とのリアルタイム連携に支障がありません。航空路線も非常に充実しており、主要都市間の直行便が多数運航されています。
さらに台湾では、日本語話者や親日的な現地スタッフを確保しやすく、現地政府や機関も日系企業の誘致に積極的です。
まとめ: 台湾は「アジアへのゲートウェイ」として最適
台湾市場は高い購買力と親日的な消費者基盤に支えられ、日本企業の商品・サービスを受け入れやすい土壌があります。また、単体でも有望な市場であると同時に、その先の巨大なアジア市場へのゲートウェイとして機能します。
台湾企業や華僑ネットワークとの連携によって、中国や東南アジアへの事業展開も加速できるでしょう。
加えて、コスト競争力の高さと日本からのアクセスの良さは、他のアジア拠点にない台湾ならではの利点です。
売上規模数億~数百億円クラスの日本の製造業・化粧品・飲食業企業など、まず台湾で成功体験を積み、そのモデルを周辺アジアに展開することが最も効率的かつ効果的なルートとなるでしょう。
今後のアジア戦略を検討する上で、最初の市場としての台湾進出のメリットをぜひ前向きに捉えてみていただければと思っています。
ワークキャピタル株式会社の台湾進出実行支援コンサルティング
当社は、東京・台北の2拠点で展開し、日本企業の台湾市場への進出をハンズオンで実行支援しています。
これまで手掛けた日本〜台湾間のプロジェクトは300を超え、法人設立から、現地での営業・マーケティング展開まで総合的に事業支援できることが最大の特長です。
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